サマーインテンシブセミナーに関して参加者から出された質問に、山口先生と松林先生から回答がありました。
Q) 乳腺:⾮浸潤癌巣の種類と量の項⽬の、⾮浸潤癌巣の有無の評価についてですが、浸潤癌巣の範囲内にのみ⾮浸潤癌巣がみられる場合も有りと判断するのですか。浸潤癌巣の範囲を越える⾮浸潤癌巣=乳管内進展がみられる場合を有りと判断するのですか。前者を有りとするのにあまり意味があると思えないのですが、どうなのでしょうか。
◆⼭⼝倫先⽣からの回答: 以前海外にEIC (extensive intraductal component) と呼ばれていた因子があり、腫瘍内の管内成分75%をそう呼んでおりました。つまり3次元で考えるとそれだけ管内成分が伸びている(多い)という解釈です。部分切除などにおける断端を考慮するときに有用と考えられておりました。⾮浸潤癌巣の種類と量は、厳密な定義を示しておりませんが、個人的には腫瘍内および/あるいは腫瘍周囲の管内成分が腫瘍全体の半分以上優勢になれば、そのような記載をしていただければ、臨床医、特に画像診断医に有用ではないかと考えております。
ただし笹島先生もおっしゃったように、先生が不要あるいは臨床医が不要と考えていれば、必須ではございません。現状エビデンスもございません。皮膚浸潤などの因子も同様で、臨床医にわかりやすいのではとは思っておりますが、予後因子というわけではないので、個人的にはnon-coreと考えております。
肉眼分類に関しては海外からも可能であれば受け入れられるように、本邦からエビデンスを創出しようといくつかの論文を出しております。
Q)肺:腺癌の浸潤について質問です。活動性線維芽細胞の増⽣・肺胞構造の破壊があり浸潤と考えられる領域で、肺胞腔内に突出・軽度の重積を⽰すような低乳頭状構造を acinar ととるか papillary ととるか悩みます。どのように診断されていますか。また、complex glandular/cribriform pattern が存在する場合、その割合を診断⽂に記載すべきと考えますが、普段先⽣はどのように記載しておられますか?(私は、[G3, component: acinar % (complex glandular ○%), papillary...]のように、acinar に含めて記載しています。 )
◆松林先生からの回答:先日のセミナーの事前質問へのお返事の中で少しだけお話をさせて頂きましたが,活動性線維芽細胞の増⽣・肺胞構造の破壊があり浸潤と考えられる領域で,肺胞腔内に突出・軽度の重積を示すような低乳頭状構造をacinarととるかpapillaryととるかに関しましては,核を中心とした細胞の突出が目立つ所見はpapillary を支持するものと考え,肺胞腔が平滑な場合はacinar を支持する所見と考えます.Complex glandular pattern やcribriform pattern は病理総論的には主に中分化に相当しますが,この度は肺では高悪性度成分に入れることになりましたし,予後不良を考えるべき成分と考えますので積極的にこれらの成分があった場合は記載する気持ちで診断に臨んでいます.本当は各成分の割合を詳細に記載した方がいいと思いますが,腫瘍全体に占めるG3成分の割合とその多寡(多い順)を記載するようにしています.
Q) 肺:⾮粘液性腺癌の浸潤径の評価について質問です。⾮浸潤巣の中に複数の浸潤巣を認める場合、⾯積⽐で浸潤径を算出し T 分類を評価することはどういった時に許容されるでしょうか。
◆松林先生からの回答:複数の浸潤巣を認める場合,それぞれの浸潤部の最大径を計測し,最も大きな浸潤径を浸潤最大径としていますが,面積比で算出する方法を存じ上げません.もしよろしければ,その方法の出典をご紹介頂けますか.
Q) 肺:"papillary が難しいと思っているのですが、papillary とちぎれた lepidic はどうやって鑑別したら良いでしょうか?また、papillary は頻度としてかなりあるものなのでしょうか?それともあまり無いのでしょうか?また、規約では、浸潤の判定は EvG 染⾊を使うと良いような書き⽅ですが、実際の判定は⾮常に難しいと思っています。肺胞構築が保たれていても、弾性線維がちぎれていたり、線維化を伴っていると、浸潤と判定したほうが良 いのでしょうか?"
◆松林先生からの回答:Papillary とちぎれたlepidicの鑑別は難しいですが,しっかりとした線維血管間質の存在を重視しています.また,線維血管間質が明瞭でないとしても,腫瘍細胞の不規則な重積が目立つ場合は乳頭型としています.但し,最近迅速診断の際に触診することもあり,腫瘍細胞が剥がれ落ち組織構築の把握が難しい症例も少なからず経験し,診断に難渋しています.Papillary の頻度は比較的高いと思います.セミナーの際には時間の関係で,EVG染色標本を沢山出してはいませんでしたが,診断の際には腫瘍部の主な部分はEVG染色を施行しており,特にHE染色標本のみでは悩ましい場合は,EVG染色の所見を重視しています.腫瘍細胞の密な増殖が認められ,弾性線維が断裂や膠原線維の増生が認められる際には,浸潤と判断しています.一方で,実はEVGを併せみても悩ましいことが少なくありませんので,HE染色に立ち返り繰り返し検鏡することも重要と考えております.